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【小説】パーク・ライフ / 吉田修一

パーク・ライフ / 吉田修一
★★★☆☆(星3つ)

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吉田修一

「悪人」で有名なこの作者。
以前読んだ「最後の息子」が面白かったのでまた買ってみた。
今回もブックオフの100円本(「悪人」は読んでないです)

パーク・ライフ (文春文庫)

僕が読んだ文庫本には、
パーク・ライフ
「flowers」
の二編が収録されていた。
今回は「パーク・ライフ」の紹介*1

あらすじ

公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。

Amazonより

登場人物は基本的に「ぼく」と地下鉄で出会った「女」の二人。
この二人を中心に話が進んでいく。
と言ってもストーリーは特にないです。日常の積み重ね。

日常

筆者の一種のゲーム性・感覚性なんかは共感出来る人には出来るだろうし、出来ない人には出来ない描写だと思った。
よくこんなの書く気になったなあ、と(決してdisりじゃないですよ!)
日常で色々感じることはあるけれど上手く言葉に出来ないことが沢山ある。
それを上手く言葉にしているのがこの作者だなあと思った。

少し長いけど引用。

園内ではなるべく俯いて歩くことにしている。
(中略)
噴水を囲むベンチの一つにゆったりと座る。
このときすぐに買おを上げてはいけない。
まずネクタイをゆるめ、地下鉄の売店で買ってきた缶コーヒーを一口だけ舐める。
あとは一気に顔を上げて目を見開く。
カッと目を見開けば、近景、中景、遠景をなす、大噴水、新緑の樹々、帝国ホテルがとつぜん遠近を見だして反転し、一気に視界に飛び込んでくる。
狭い地下道に馴れた目には少し酷だが、頭の芯がクラクラして軽いトランス状態を味わえる。
なぜかしら、涙がこみ上げることもある。

特に中身のある話じゃないのにこれで数十行。
THE日常小説。

スタバでコーヒーを買っておしゃべりしたり、写真展に行ったり。
ただのデートじゃねえか、というツッコミもしたくなるほど。
そして特に内容もなくあっさりと終わります。

まとめ

読後感がとにかくスッキリしている小説。
最初にも書いたのだけれども、ストーリーは特になく、「ぼく」の日常を綴る小説だからワクワクドキドキやハラハラ感を期待する人には不向きかも。
あっさりしている分本当にどこでも気軽に読める、それこそ公園のベンチなんかでスタバのカフェモカを飲みながらandymoriを聞いて読んだらいいんじゃないかな。

パーク・ライフ」の「パーク」は公園で、公園のベンチが割とよく出てくる。

ハッピーエンド / andymori

この曲を思い出した。

夕暮れの井ノ頭公園で
コーラの空き缶蹴飛ばして

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終わり部分を引用してもネタバレにならないくらいの日常感。

「よし、私ね、決めた」
と呟いた彼女の言葉が蘇り、まるで自分まで、今、何かを決めたような気がした。

そして僕はスタバに行くことを決めました。

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*1:パーク・ライフよりもflowersの方が個人的には面白かったのだけれども。